家族の幸せと迫りくる別れの時

Episode 31

新年を迎え次女、三女(双子)の家族5人が我が家に来て食事をした。幸せな一年になりますようにと話し合い大いに盛り上がった。少し落ち着いたところで双子が突然赤ちゃんができたと言い出した。予定日も同じで、なおさらびっくりした。振り返って考えると、片方が熱が出ると何時間後に必ず片方も熱を出すことがあり双子はそんなものかと思っていたが、まさか妊娠も同時、予定日も同じとは思わなかった。女房も喜んでいたが何処か何かおかしいと私には感じた。
私は、相変わらず週一で川崎に出張していたが、人件費を含む経費が膨らみ、採算が合わないので、なんとかしようと考えていた。 2月の終わり女房から電話があり、今日は話がありますので早く帰って来て下さいと連絡があった。一瞬長く付き合っている彼女のことがバレたのかと考えながら帰宅した。「パパ座って」と一言、その後静かに話し始めた。今日医療センターに行きました。乳がんでした。ステージ4です。多分死ぬ事になります。 5日後に入院します。お金がかかると思いますがお願いします。と。 その時の私は冷静さを失い、大きな声で怒り飛ばしたのではないだろうか、記憶は定かでない。その夜どの様に過ごしたかも覚えていない。
次の夜、次女夫婦を、呼んで事情を説明した。私は次女、三女が勤めている下関済生会病院に入院した方が安心だと言った。女房はどちらでもいい感じだったが、済生会に入院する事になった。私は毎日の様に関門トンネルを渡り病院に通った。見舞いに行くと元気そうなフリをしていたが、ぽつんと話し始めた。 双子が妊娠して働いていて大変なのに、私の事で心配かけて何かあったら耐えられないからと言い出した。 抗がん剤を打つ治療も始めたが、後遺症が激しく2回ぐらいで辞めてしまった。病室には次女、三女が顔を出してくれるので気がまぎれるので良かったみたいだ。
1ヶ月して主治医の先生から話があると言うので行くと胸の写真を見ながら説明を聞いた。手の施しようがないのでこの病院にいても何もできない。病状は女房に話すことなく自宅に帰る事にした。ロータリーに在籍していて、家の近くの病院の医院長で外科が専門の先生に相談して患部のガーゼと薬をつける治療をお願いした。
可愛がってた犬のリキは、事前に姪に預け、家には猫のまりちゃんがいた。四国高松に居る長女には乳がんとは知らせてなかった。理由は不妊治療中で心配させたくないとの女房の考えであった。 私は朝会社に出勤して、午前中に帰り病院に連れて行き、昼食を用意し、一緒に食べて、会社に戻る日々を送っていた。川崎には2週間に1回にして日帰りで帰る様にした。家には次女が来てくれて、頭を洗ったり、タ食を共にし女房は凄く感謝していた。ある日川崎から夜遅く帰ると、女房が起きていて長女に子供ができたと笑顔で話してくれたのだが・・・・

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