経営危機と再建の挑戦

Episode 8

長男から社長を受け継ぎ、帳簿を見て唖然としました。

振出し手形の項目はその月の記帳欄をはみ出し、別の紙に記帳して糊で貼ってました。
入金をはるかに超える金額が五ヶ月先まで、仕入先や何処に振出したのか判らない記帳がありました。
計算をするとその月の月末までに二千数百万の資金不足が生じる事が判りました。
さらにこの月だけでなく五ヶ月先までの資金不足になり、その額は合計で一億をはるかに超えていました。

景気は良くて受注は多く、毎日残業の日々が続いてました。
眠れない日々の中考えて考えて出した答えは、手形振出しの金額と一ヶ月の運転資金で
一億五千万あればなんとかやって行けると確信したのですが
まず銀行は無理、二週間後には資金ショートで不渡りになる。
時間が無い中で当時の大得意でもありました社長に相談する事にしました。

早速、面会の時間を頂、き恐る恐る社長室に入り
「御相談が有ります」と切り出し顔を見ると、次の言葉出てこない位恐い顔をして私を見ていました。
今思い出すと、私自身腹が座って居たのかも知れません。
私の話が終わると、社長は「ニャッ」と笑いました。
話を分かってくれたのだと思い私もつられて笑った瞬間
「君は月に向かって吠える犬だ」との言葉が返って来ました。
「意味が良く理解出来ません」と答えると、社長は
「良いか、犬が月に向って大きな声で吠えても意味もなく、無駄な事だし何も変わらない事だ」と言われ
体から力が抜けていくのが分かりました。

目の前が真っ暗で夜の食事も喉を通らずお酒だけは飲んでましたが、一向に酔わないまま朝が来ました。
悶々としながら会社に行きボーッとしてると、相談した社長の会社の総務室長から電話有り
「直ぐ会社に来い」との電話でした。
総務室長の話では、
「会社再建計画書を提出し上手く行くようで有れば総務室長の権限で資金提供をしても良い」
とのお話しが社長から有ったとのことでした。
私は早速計画書の作成に取掛かり、徹夜して一晩で作り上げました。

月々の売り上げは伸びており、単月では黒字でした。
大口仕入先の手形の総額を五ヶ月で支払うのを十ヶ月に分割し
毎月の支払い金額を減らし、闇金融に振出していた手形を全て回収することにしました。
相談した社長の会社への売り上げは、当時で年間1億3千万位有りましたので
その売り上げの20%を資金手当してくれた分に対しての返済に充てる事で話がまとまり
毎月末2千数百万のお金を借りに行き、当社の当座預金に入金して不渡りに成るのを回避していきました。
これで上手く行くとは思って無かったのですが、やはり新たな問題が次々に出てきました。

その頃の印刷業界はというと、前工程の作業を改革する文章作成専用の「ワープロ」が東芝から発売され
二年後には、メーカー各社がワープロ業界に参入し急速に普及していきました。
私はこれから物凄い変化を起きる事を直感しました。
丁度その頃、お客さんでもあり飲み友達の先輩から
「自分が今してる仕事の将来余り良く無い、資金は有るので何か良い仕事は無いか」と相談が有り
私は、今から印刷業界は大きく変化して行く事を語り
ワープロによる文章作成をきっかけに新しい印刷会社を設立する事を提案しました。
すぐに話はトントン拍子に進み、小倉駅前にユニークな洒落た店舗を出しました。

私が兄貴から
「お前が社長をして会社を建て直してくれ」と、頼まれる一年前の事でした。
友人で有る先輩と新しい会社を設立し、さらに兄貴から社長を引継ぎ
両肩に今までに経験した事の無い大きくて、重たいオモリがのしかかってきました。

波瀾万丈の始まり…。

経営危機と再建の挑戦

Episode 8


Episode 7

昭和の景気好況と印刷業界

PREV

Episode 9

病気と事業運営の並行調整

NEXT

1995 - 2024 HEARTY BRAIN Inc.

Sound On Sound Off