心温まる再会と新たなビジネスの提案

Episode 12

平成元年も半分程が過ぎた梅雨の頃。ある友人と久しぶりに顔を合わせ、話を交わす時がきた。
彼は開口一番、 「よく病気を克服したなあ。皆んなで心配していたよ」と喜んでくれ、 私もその言葉に感激して目頭が熱くなり、感謝を述べた。
「ところで‥」と彼は話を変え、 「実は、お互いにそれぞれの会社があるが、君の病気が長引くと思い、 双方が生きていくためには、一つの場所で仕事をしていく方が効率的ではないか」との申し出であった。
彼には精神的にも力になって貰い、また尊敬もしていたので、恩返しの意味もあり「前向きに検討しましょう」と私はこたえた。
すると「すでに場所は確保しようとしている所がある。一緒に観に行こう」との事で、 その足で二人で向かった場所は小倉南区、土地は400坪程、3階建ての建物があった。
ガラガラと重たい門を開けて中に入ると、 鉄格子の犬小屋と思われる大きな檻が三棟ほどあり、少し不気味な感じであった。
建物の中に入ると、なにかを祀った様な場所があり、増々気味が悪くなり顔を顰めると、 彼は図面を取り出し「建物のすべてを完全リフォームして生まれ変わるので問題は無い」と説明をしてくれた。 すでに銀行との話も付けているとの事なので、前向きと言うよりは即行動していかなければとならないと思った。
しかし、そのためには解決しなければならない様々な問題が山積していた。 まず従業員への説明、さらに会社の土地の売却、引っ越しの問題、合併手続き等々...。
そんな事をにしているうちに平成元年も師走を迎えていた。 まさに目まぐるしい一年だった。
リクルートコスモス未公開株事件をはじめ、 昭和天皇の大喪の礼、消費税スタート、中国での天安門事件、美空ひばり死去、松下幸之助死去、ベルリンの壁崩壊と、 何か起きそう平成の始まりで、なぜか胸に少し引っかかるものを感じ...。

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昭和から平成へ。印刷業界の技術変革

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